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【INTERVIEW】キッズブランド[michirico]デザイナー・フォトグラファー masacova!さん_「アイテムの中の写真で子供たちが色んな不思議を感じる、そんなきっかけになるアイテムを作りたい」

加工された写真をデザインに取り込んだ可愛くて独創的な世界観のアイテムで、高感度なキッズセレクトショップを中心に注目を集めているキッズ&レディースブランド・michirico(ミチリコ)

そのデザイナー・masacova!(マサコバ)さんは、デザイナーとしての活動と同時に、写真専門誌の表紙写真を手がけたり、写真教室の講師を務めるなど、michiricoがデビューする以前からフォトグラファーとしても活躍されているんです。

今回は、そんなマルチな活躍を見せるmasacova!さんにインタビュー。20代でフォトグラファーとしてデビューしたきっかけや、michiricoを含めた物作りへのスタンスなど、色んなお話をお聞きしてきました。

 
 
 

『写真という“モノ”が出来上がってくることに刺激を受けたのがフォトグラファーを目指したきっかけ』

 
COCOmag___まずお聞きしたいのは、michiricoを始める前、フォトグラファーとしての活動についてです。

今もmichiricoのデザイナーとしての活動と、フォトグラファーとしての活動を並行してこなしてらっしゃいますが、そもそもどんなことがきっかけでフォトグラファーを目指して、実際にフォトグラファーとして活動するようになったんですか?
 
 
michirico・masacova! さん(マサコバさん・以下 masacova! さん)___もともとは、地元の大阪で通っていた美術系の専門学校で、イラストやデザインを学んでいたんです。その課題の中で、フィルムを使って撮影して自分で写真を現像するというものがあったんですけど、その過程にすごく興味を惹かれて。
 
 
COCOmag___「私がやりたかったのはこれだ! フォトグラファーになるんだ!」みたいな?
 
 
masacova!さん___いえ、そこまでのテンションではなかったんですけど…(笑)。

フィルムの場合は、現像するまで仕上がりが分からないじゃないですか? それが現像されることでシャッターを押した瞬間とか風景が実態化するというか、写真という“モノ”として出来上がってくることに、とても刺激を受けたんですよね。

もともと80年代のポップアートに興味があって、その中でもAndy Warhol(アンディ・ウォーホル)が好きで。
 
 
COCOmag___写真を作品に取り込んだり、同じモチーフを使って色んなパターンで作品化したりしてますよね、Andy Warholって。
 
 
masacova!さん___そうそう、自分で自分の作品を複製したり、シルクスクリーンプリントで色を変えたりする彼のスタイルが好だったんですけど、写真ならそれに近いことができるんだと実感して、それからはどんどん写真のほうに…という感じでしたね。
 
 
COCOmag___その後は、地元の大阪でフォトグラファーとしてデビューして。
 
 
masacova!さん___そうですね、学校を卒業して、少し働いたりした後に。初めてフォトグラファーとしてお仕事をいただいたのは、関西エリアのファッション誌でした。
 
 
COCOmag___フォトグラファーとしてのデビューがファッション誌って、ある意味順調なスタートですよね。
 
 
masacova!さん___いえいえ、正確にはその雑誌の中の音楽ページで、とあるバンドを私の自由に撮影していいよ、みたいな感じで。

もともとファッションフォトグラファー志望ではなかったし、お店とか商品をきれいに撮れる訳でもなかったしで、編集部の担当者も「それなら、ミュージシャンを自由に撮るんなら大丈夫でしょ?」って考えてくれたみたいで(笑)。
 
 
COCOmag___なんというか、消去法的な…(笑)。
 
 
masacova!さん___ホントですよね(笑)。それが24歳の春ごろの話なんですけど、それからフォトグラファーとしての活動が始まった感じでしたね。
 
 
COCOmag___大手セレクトショップのBEAMSとのコラボも、その直後にスタートしたんですよね? それはどんなきっかけで?
 
 
masacova!さん___サーフアートで有名なPalm Graphics(パームグラフィックス)の豊田さんという方が私の写真を気にいってくださっていて、何かと目を掛けてくださっていたんです。

そのPalm GraphicsとBEAMSさんがもともとコラボしていたこともあって、私にも「フォトプリントのTシャツ一緒に作ったらええやん」みたいな話になって。
 
 
COCOmag___自分が知らないところで話がどんどん進んで、みたいな流れで?(笑)
 
 
masacova!さん___そうそう、本当にそうだったんです。「決めといたから、あとヨロシク」って(笑)。

私自身、フィルムからポラロイドカメラを使った作品作りに移行した時期だったんですけど、そのポラロイド写真の雰囲気と、ちょうどその頃BEAMSさんの中で立ち上がった「BEAMS BOY」のサーフガール的なコンセプトが合うと言ってくださって。

そのコラボが決まったのがきっかけで、フォトグラファーとしての活動の時は「masacova!」を名乗るようにもなったんですよ。
 
 
COCOmag___それからは、色んなアイテムでBEAMSとコラボされていましたよね。
 
 
masacova!さん___そうですね、Tシャツから始まって、クッションとか帽子とかの雑貨、あとは吉田カバンとのコラボとか。それ以外にもBEAMSの店内で個展を開かせていただいたりして、なんだかんだで10年ほど続けさせてもらいました。

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2006年に発刊されたmasacova!さんの作品集「Holiday in」(PIE BOOKS)より。プリントTシャツをはじめ、お皿、缶バッジ、腕時計など、BEAMSとのコラボで多種多様なアイテムを展開していました。
 
 
 

『“物作りを続けたい”という気持ちから始まったキッズブランド・michirico』

 
COCOmag___その10年の間に、拠点を大阪から東京に移して、お子さんも誕生されて、やがてキッズブランドの「michirico」がスタートして。
 
 
masacova!さん___そうですね、ブランドとして正式に展示会を開いたのは2012年の夏で、2013春夏コレクションをお披露目しました。

でも実は、その2年前ほどから個人的な活動としてmichiricoの子供服はスタートしていたんですよ。
 
 
COCOmag___あ、そうだったんですね。
 
 
masacova!さん___ええ、今ではmichiricoの定番デザインになっているボタンプリント&フリンジのカットソーを、「こどもビームス」だけで取り扱ってもらっていたんです。

長年続けてきたBEAMSさんとのコラボがお休みになった時期で、ちょうどそのタイミングでmichiricoをスタートさせて、というような感じでしたね。

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michiricoが正式にデビューした頃のミニカタログ。表紙はもちろん、中面の写真はすべてmasacova!さん自身によるもの。定番アイテムのボタンプリント&フリンジのカットソーも、もちろん掲載されています。
 
 
COCOmag___それはやっぱり「自分の子供に着せる服を作りたい」みたいな気持ちが強かったから?
 
 
masacova!さん___う〜ん、そういう気持ちが無かった訳ではないんですけど、それよりも「物作りを続けたい」という気持ちの方が強かったんだと思います。

年齢的なことや出産を経たこともあって、自分のファッションやライフスタイルがそれまでとは変わってきた頃にBEAMS BOYとのコラボがお休みになって、「じゃあ次は何を作ろう?」って考えて。
 
 
COCOmag___フォトグラファーとしての活動も、ある意味で物作りなんじゃないかと思うんですけど、それとはまた違う意味で?
 
 
masacova!さん___フォトグラファーとしての活動の時も物作りの側面はありますけど、それとはまた別に「自分の写真を素材として使った何かを作りたい」という気持ちでしたね。

それからどんな物を作れるのか、いろいろ考えていく中で自然と子供の身の回りに目がいくようになって、「自分の写真を子供服に取り込んでみたら面白くなるんじゃない?」って思い付いて。
 
 
COCOmag___確かに、michiricoのアイテムはmasacova!さん自身が撮影した写真をデザインに取り込んでいますけど、その使い方がユニークですよね。
 
 
masacova!さん___私が撮った写真の一部を加工してプリントしたり、柄として使ってデザインすれば、まだ誰もやっていない面白いアプローチの子供服ができるかもって思ったんですよね。そこから徐々にアイデアがまとまっていって、michiricoとしてデビューしたような感じです。
 
 
COCOmag___シーズンごとのテーマはどうやって決めているんですか? michiricoのデザインは写真とリンクしている訳だから、テーマに沿った写真が必要ですよね?
 
 
masacova!さん___事前にテーマを練りこんでから撮影に出かけることもあれば、旅先で撮った写真からテーマが生まれることもあって、あまり決まったルールはないんですよね。

ただ使う写真をセレクトするときは、あまりスマート過ぎるものでは選ばないようにしていて…自分では「鈍くさ可愛い」って言ってるんですけど(笑)、どこか抜け感があるとか、ちょっとシュールなんだけど優しい感じとか、そんな良い意味で引っ掛かりのある写真を選ぶようにしていますね。
 
 
COCOmag___ 「鈍くさ可愛い」…ちょっとわかる気がします(笑)。

そんな写真をデザインに落とし込んだmichiricoのアイテムは、シルエットで少し遊びがあったりするものの、基本的にはシンプルなデザインが多いですよね。
 
 
masacova!さん___あくまで写真ありきのアイテム作りなので、複雑なことはしないようにしていますね。

とはいえ、写真だけが目立つようなデザインにもしたくないので、アイテムの中でバランスを取って、モノとして可愛いデザイン、見た瞬間に「着てみたい」と思ってもらえる服にしたいっていつも考えています。
 
 
 

『michiricoのアイテムが、家族の生活の中にアクセントを与える1ピースになってくれたら嬉しい』

 
COCOmag___いろいろお話を聞いていると、masacova!さんの物作りのアプローチは、やっぱりちょっとユニークですよね。

自分の写真を加工することにあまり抵抗が無いように感じるし、何というか、自分の手を通過していくものに対してちょっとドライに見ているような感じで。
 
 
masacova!さん___えーどうでしょう、そんなことはないと思うんですけど…michiricoとして作っている服には、もちろん愛情があるし(笑)。

ただ、フォトグラファーになったのは「写真で何かを伝えたい」とか「真実をリアルに表現したい」とかの熱い気持ちではなくて、あくまでも物作りを進める中での最良のツールとして捉えていたからなんですよね。
 
 
COCOmag___masacova!として作品作りにポラロイドを多用していたのも、そんな感覚で?
 
 
masacova!さん___ええ、正に。「旅先の風景をいかにリアルに伝えるか」とかではなくて、自分が良いなと思った風景や瞬間をサクッと切り取って持ち帰る、みたいな感じ。

そうそう、masacova!として個展を開いていた時には「風景をお持ち帰りする」というテーマがあったんですよ。
 
 
COCOmag___風景のお持ち帰り? ポラロイドカメラで?
 
 
masacova!さん___旅先の自然や土地に感情移入したり、その場所で生活して馴染んでいくとかではなくて、訪れた先々の気に入った部分だけを切り取ってコレクションしていくような感覚ですね。ポラロイドカメラは、そんな作品作りに最適だったんです。

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masacova!さんの作品集「Holiday in」(2006年・PIE BOOKS)。カリフォルニアやハワイの風景を“お持ち帰り”した、柔らかい光のタッチのポラロイド写真が収められています。
 
 
COCOmag___その感覚って、またひと回りして今の時代ともリンクしているように感じますね。例えばInstagramみたいに、自分の周りにある情報を気ままにクリップしてまとめていくような感覚というか。

それに、写真を色々と加工する感覚も。フォトグラファーの方って自分の写真にとてもこだわりがあって、切り抜いたり色を加工したりするのは絶対NG、みたいな雰囲気もあるじゃないですか?
 
 
masacova!さん___あー、分かります、分かります。フォトグラファー、写真家として活動するのなら、それはそれで大切なことなんですけどね。

ただ、私は自分の写真のオリジナルプリントにこだわりがある方ではないし、逆に同じ写真をいっぱいプリントできることの方が嬉しいような人なので(笑)、自分の写真を加工することには抵抗がなくて。

だからmichiricoの服のデザインを考える時も、生地やボタンや糸の色を選ぶように写真も素材の一部、グラフィックを表現するための素材だと思っているんですよね。
 
 
COCOmag___なるほど。それは面白い感覚ですね。
 
 
masacova!さん___まあ、自分で撮影した写真だから好きにできるっていうところもあるかもしれませんけどね(笑)。

例えば今シーズンのアイテムだと、鳥を切り抜いて並べてみたり、積み上げてみたり、さらにその上からボーダー柄を被せてみたりとかも。写真を服に落とし込んだ時に効果的に見えるように…といつも思っているので、シーズンごとに色んな加工を試していますね。

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michiricoの2016秋冬コレクションから。ペンギンを並べてみたり、色んな種類の鳥を縦に積んでみたり…と楽しいグラフィックが目を引きます。
 
 
COCOmag___そういうお話を聞いてあらためてアイテムやコレクションを眺めてみると、michiricoはキッズ&レディースのアパレルブランドというよりは、プロダクトブランド的な意味合いが強いのかもしれませんね。
 
 
masacova!さん___うーん…確かに、そういう側面はあるかもしれないですね。私はアパレル出身の人間ではないし、服飾デザインとして細かなディテールを作り込むとか、そんな専門的な技術は持っていないんです。

でも、さっきも言ったように自分自身が撮った写真ならほかとは違うものを作ることができると思ってmichiricoをスタートさせので、そういう意味でmichiricoのアイテムは「masacova!の写真を使ったプロダクト」と言えるのかもしれませんね。
 
 
COCOmag___そう捉えると、michiricoを手に取るママや実際に袖を通す子供たちへのアプローチも変わってきますよね。今後は雑貨とかも服以外のアイテムも展開できるかもしれないし、masacova!としての個展をリンクさせることもできるかもしれない。
 
 
masacova!さん___急に色々はできないんですけど(笑)、そんなふうに広げていけたらいいですよね。

ブランドとしては、カジュアルだけど少し品のある感じとか、ちょっと変わった写真の使い方とか、そんな流行とは離れた部分で個性をアピールできるのがmichiricoのアイテムだと思っているので、それを面白がってもらえたらな、というのがまず第一にあります。

それと、どのアイテムも敢えてサイズ感を緩くしたデザインで、子供が成長してもそれに合わせて着続けられるように心掛けているので、そんな気に入ったモノと長く付き合う楽しみ方も伝えられたらって思っていますね。

それ以外のアイテムを手掛けることがあれば、またその時々で色んなアイデアを練ることになるはずですけど…今思うのは、michiricoのアイテムを手に取ってくれた方は、どこかで「これ良いな」って思ってくださったんだと思うし、そんな「良いな」がママにとって心地よく過ごせるきっかけのひとつになれば嬉しい、ということですね。

私がポラロイドカメラで色んな風景を切り取って集めてきたみたいに、michiricoのアイテムが家族の生活の中にアクセントを与える1ピース、自分らしいスタイルを形作る時の1ピースになってくれたらなって思うし、子供たちにとってはアイテムの中の写真が色んな疑問や不思議を感じるきっかけになってくれたら嬉しい。

そんなアイテムを送り出すブランドとして、これからもmichiricoを続けていけたら良いなと思います。

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(取材・文/COCOmag編集部・柳原)

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