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【INTERVIEW】キッズ&ベビーシューズブランド[NINOS]デザイナー 火神政博さん_「子供たちの自由な発想や感性を刺激する“新しい子供の革靴”を作りたい」

柔らかくてどこか懐かしいようなフォルムと、明るい発色の革のコンビネーション。そんなキッズ&ベビー用の革靴をラインナップする、メイド・イン・ジャパンのキッズ&ベビーシューズブランド・NINOS(ニーニョ)

昨年夏に展示会デビューして以来、その上質なデザインはもちろん、子供の足の成長を考慮した設計で注目を集めているブランドです。

今回はそんなNINOSのデザイナー・火神政博さんにインタビュー。子供の足の成長を重視したブランドのコンセプト、そしてアイテムを通して子供たちに伝えたいことなど、NINOSの革靴に込められた想いをお聞きしてきました。
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★『色んな出会いやきっかけが重なってスタートした、シューズデザイナーへの道』

 
COCOmag___NINOSをスタートさせる前は、メンズのシューズブランドにいらっしゃったとか。やっぱり、もともと靴が好きで、靴のことを勉強してそのブランドに入社して…みたいな流れだったんですか?
 
 
NINOS 火神政博さん(以下、火神さん)___いえいえ、どちらかと言えば色んな出会いやきっかけが重なったようなもので。

20代前半の頃、昼間はアパレルの販売、夜間は服飾系の専門学校に通っていた時期があって、それと並行して少しだけモデル活動をしてたいことがあったんです。

とあるブランドのコレクションにモデルとして出演した時、靴を担当していたシューズデザイナーが同年代だったので、彼とすぐに意気投合して。そこから靴に興味を持ち始めた感じでしたね。

専門学校を卒業して、一度は舞台衣装を手がける会社でアシスタントとして働き始めたんですけど、その後すぐにメンズのシューズブランドの立ち上げに参加することになって。それが、仕事として靴に関わるようになったスタートでした。
 
 
COCOmag___そのブランドでは、どんなお仕事をされていたんですが?
 
 
火神さん___ブランドの立ち上げから参加したので、初めはスタッフも少くて、もう何でもですね(笑)。

でもそのおかげで、靴にまつわる仕事は全てそこで学ぶことができました。靴づくりの基本的なことから、革をはじめとした素材のこと、実際に生産する際の工場とのやり取りまで。

オーナーデザイナーが描くシューズのデザインやアイデアを形にするのをこなしつつ、それ以外に鞄や財布、帽子や雑貨などブランドとして展開しているアイテム全般も手掛けていましたね。
 
 
COCOmag___そのブランドには16年勤められたとのことですが、退社されてNINOSを立ち上げることになったきっかけは、どんなものだったんですか?
 
 
火神さん___前職のブランド在職中に、とある国内の靴メーカーの方と知り合う機会があったんです。

そのメーカーは1940年代に設立されてから、ずっとベーシックな子供靴を手掛けてきていたんですが、それ以外に何か新しい展開ができないかと考え始めていた時期だったらしいんですね。

その話を聞いた時に、私から「一緒に子供の革靴を作りませんか?」と提案して。
 
 
COCOmag___そのメーカーの技術と、火神さんのデザインを掛け合わせて…ということですね?
 
 
火神さん___ええ、靴メーカーとしての技術力、特に子供の靴についての技術は一流のメーカーなので、そこにメンズアパレルの世界で靴を作り続けてきた私の感覚や知識をプラスすれば、今までに無い新しいゾーンの子供の革靴を作れるんじゃないか、と。

そのメーカーの方ともその意見ですぐに一致して、手を組んでブランドを立ち上げることになりました。それが2012年ごろの話です。
 
 
COCOmag___NINOSが初めて展示会に出展されたのは2015年夏の展示会でしたから、ブランドデビューまでは約3年掛かった訳ですね。

2015年8月に開催された展示会「Playtime TOKYO」でのNINOSブースの様子。
 
 
火神さん___そうですね、私自身はそれまでずっと靴に携わってきていたものの、子供の靴は初めて取り組むものだったので、あらためて子供の靴について、そして子供の足とその成長について学ぶための準備期間が必要だったんです。

それと並行してブランドの基本コンセプトを練り込んだり、具体的なデザインを考えたりといった作業も進めていました。
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こちらはデザインや設計を練る段階で作られたキッズ&ベビーシューズのサンプル。細かなデザイン指示など、細かなこだわりが込められているのが伝わってきます。
 
 
COCOmag___とは言え、約3年という期間に焦りはなかったですか? 前職ではメンズアパレルの世界でシーズンごとに新しいものを作り続けていらっしゃった訳ですから。
 
 
火神さん___う〜ん、急いでも良いものはできないので、そういう意味では焦りはなかったですね(笑)。自分の感覚とメーカーの技術力を擦り合わせると言うか、じっくりと企画を練る期間は必要なものだったので。

時間を掛ける分、良い作りの子供の革靴を作り上げて、そのバックグラウンドも含めてお見せすることができれば、きっとショップさんやその先にいるママ・パパにも伝わるはずだということだけを考えながら、準備を進めていた期間でしたね。
 
 
 

★『デザインはもちろん、機能性や安全性、足の成長にもこだわった子供の革靴作り』

 
COCOmag___そんな準備期間を経てデビューしたNINOSですが、ブランドのこだわりとして、子供の足にとって良い靴、安全な靴を作ることに重点を置いていらっしゃいますよね?
 
 
火神さん___そうですね、ファッションアイテムの中でも靴は立つ姿勢や歩く姿勢、骨格のバランスに深く関わってくるアイテムなので、NINOSではそれまで携わっていた大人の靴以上に神経を使っています。

骨格の話を少しすると…人が立つ姿勢を取るときに一人一人のベストポジションがあるんですけど、足はその土台となるものなんです。だから足の位置が正しくないと、その上の体の部分全てのバランスがおかしくなってしまうんですよ。

成長に合わせて脚全体の骨格が固まるのは12歳前後と言われているんですけど、その途中の段階できちんとサポートしてあげないと、全身の骨格のバランスが崩れてしまうことも起こりうるんですよね。
 
 
COCOmag___骨格のバランスが良くないことが原因で膝や腰に余計な負担が掛かって傷めてしまう、なんて話はよく聞きますね。
 
 
火神さん___まさにそれですね。NINOSのキッズサイズの靴では、骨格が固まりきっていない子供の脚のバランスを保つために、靴の中で足が正しい位置に置かれるよう設計されたインソール(中敷)を採用しています。

これはインソールの設計士さんに、NINOS専用のものとして製作してもらったものなんですよ。
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cocomag_ninos_2016092902NINOS専用のものとして設計されたインソール(画像下左)。靴のフォルムを形作る木型(画像下右)も、もちろんNINOS専用に作られたものです。
 
 
COCOmag___インソールにも専門家がいらっしゃるんですね。
 
 
火神さん___はい、トップアスリートの競技用シューズから足に障害がある方のための靴まで、色んな靴のインソールを開発されてきた、日本でのインソール設計の第一人者と呼ばれている方がいらっしゃって、その技術を受け継いだ息子さんに設計を依頼しました。

その方との出会いも前職時代のご縁だったんですけど、私自身も立つ姿勢のバランスを矯正してもらったらとても楽になって、こんなに違うものなのかとびっくりした経験があって(笑)。

自分が子供の靴を作ることになった時に、真っ先に「あの人に子供用のインソールの設計をお願いしよう」と思いましたね。
 
 
COCOmag___インソール以外に、素材の革にもこだわっていますよね?
 
 
火神さん___はい、ベビーのファーストシューズは表側と裏側に、キッズサイズの靴はライニングと呼ばれる靴の内張部分に、国際的なエコ素材の統一基準でもある「エコテックス スタンダード100 クラスⅡ」を取得している「TORNAT®(トルナット)」という革素材を使用しています。
 
 
COCOmag___この「TORNAT®」は、一般的な革とどう違うんでしょうか?
 
 
火神さん___動物の革を靴や鞄の材料となるように加工する「なめし」という段階で、時間や工程を短縮するために薬品を用いることが多いのですが、その廃液が環境に良くない影響を与えてしまったり、革に残留した薬品がアレルギー反応の原因になることがあるんです。

「TORNAT®」は、なめしの段階で独自の製法をとることで有害物質を極力出さないようにしているので、一般的な革に比べて環境に優しいし、人間にとってもストレスが少なくてアレルギー反応が起こりにくい革素材なんです。

大人以上に敏感な子供の手や肌が直接触れることもある部分ですから、少しでも安全性の高い革を使いたかったんですよね。
 
 
COCOmag___ファッションの観点だと靴は数あるファッションアイテムのひとつとして見てしまいがちですけど、特に子供の場合は安全面も含めたデザインが必要になるんですね。
 
 
火神さん___そうですね、前職でもデザインと機能性を両立させた靴を手掛けていましたけれど、NINOSではそれにプラスして、子供の足にとって安全な靴を作ることにこだわっています。

ルックス重視で大きめのサイズを買って中敷で調整したり、ヒールやアウトソールがすり減ってきてもそのまま履き続けたり、子供の靴は「成長してすぐに履けなくから」という理由でちょっといい加減になってしまうところもありがちだと思うんでけど、どちらも子供の足の成長にとっては良くないことなんです。

子供が歩きにくそうにしていないかとか、アウトソールが変な磨り減り方になっていないかとか、親御さんがちゃんと見て対応してもらえるようになれば良いなと思うし、NINOSの靴がそんなことを意識する、靴の良し悪しを意識するきっかけになればと思いますね。

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★『“子供の足の器具”としての子供の革靴は、機能性や安全性にまだまだ可能性があるアイテム』

 
COCOmag___設計の部分ではかなり真面目というか、安全面や健康面を考慮した作りになっているNINOSの靴ですが、デザイン面を見ると子供らしい柔らかいフォルムと、明るい色使いが目を引きます。

メンズファッションの世界の中でも割と硬派でモードなイメージのシューズブランドで経験を積まれたという経歴からすると、良い意味でギャップがあるというか(笑)、少し意外なのですが。
 
 
火神さん___確かに前職のブランドはそんなイメージだと思うのですが、実は私自身の服の趣味はそうでもなくて、基本的に黒い服は着ないし、とにかくいろんな色のものを着たいというタイプの人間なんですけどね(笑)。

デザイン的な話をすると、個人的には1910〜20年代の古き良き時代の靴、柔らかみがあってクラシカルなデザインの靴が好きなんです。そんなクラシカルな靴のデザインを現代的に解釈して、今のファッションの流れに合わせたフォルムや風合いで子供のサイズにどう落とし込むのかを、NINOSのデザインでは考えています。
cocomag_ninos_2016092908火神さんが資料として収集しているという、イタリアやアメリカなどの古い子供用シューズ。どちらもコロンとしたフォルムが可愛い。
 
 
COCOmag___確かに、古いサッカーシューズのようなフォルムとか、昔のヨーロッパ映画の中で子供たちが履いていそうなものとか、NINOSの靴はクラシカルなイメージを彷彿とさせますよね。でも、明るい革の色や色の組み合わせはモダンな雰囲気でもあって。

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火神さん___そうですね、定番的過ぎない、けれどトレンドにも引っ張られ過ぎない、今までになかったけれど普遍的でもある、そんな感覚の子供の革靴を提案したいと考えながらデザインしたのが、今ラインナップされているモデルなんです。

これは靴に限らずですけど、色んなジャンルでデザインのアイデアはひょっとしたら出尽くしてしまっていて、全く新しいデザイン、今まで誰も見たことがないデザインというものは、もう無いのかもしれないと思うことがあるんです。

でも、子供の革靴の場合は「子供の足の器具」としての可能性、素材の安全性や足の成長のことを考えた機能性の面で、まだまだやれることがあるんじゃないかと思っています。

NINOSならではの柔らかい雰囲気のデザインに、そんな機能性をうまくミックスさせて、今までになかった子供の革靴を提案できたら…ということをいつも考えていますね。

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★『子供の自由な発想や感性を刺激する、そんな“新しい子供の革靴”作りがNINOSの目標』

 
COCOmag___先ほどから度々出てくる「新しいゾーンの子供の革靴」というワードなのですが、デザイン面はもちろん、表側からは見えない部分も含めたNINOSの靴の作り込みは、確かに今までになかったものだと思います。
 
 
火神さん___そう言っていただけると、素直に嬉しいですね(笑)。
 
 
COCOmag___いえいえ(笑)。でも、少し意地悪な言い方かもしれませんけど、表面的なデザイン以外の部分…インソールの設計や、内張の革素材のことなどは、見た目だけでは伝わりにくいと言うか、伝える意識やツールが必要な部分かもしれませんよね?
 
 
火神さん___確かにその通りで、オフィシャルサイトでインソールや「TORNAT®」について触れてみたり、ファーストシューズを題材にしてPRムービーを作ったりはしているのですが、実際に商品が並ぶ店頭でどれだけお客様に伝えられるのかは、これからまだまだ工夫していかないといけない部分だと感じています。


ヨーロッパと比べまだ靴の文化が浅いと言われることも多い日本で、靴文化が広まるきっかけになれば…という思いで作られた、NINOSのPRムービー。手掛けたのは、若手アニメーターとして海外からも注目を集めている岡崎恵理さん。
 
 
COCOmag___子供の足の成長のことを考えていたり、環境への影響も考えていたり、そんなパパならではの視点やデザインは、一般のママ・パパも共感してくれるはずですし、もっともっと伝わって欲しい部分でもありますよね?
 
 
火神さん___そうですね、私には10歳と7歳の二人の男の子がいるんですけど、実際に子供たちがいるからこそ、NINOSの靴をデザインする時に足の成長や環境について考えるようになったのは確かですね。実際に子供たちが履く靴を選ぶ時も、そういう観点で選んでしまいますし。

子供と靴と言えば…実は子供たちがこれまでに履いてきた靴は、履き古したものも含めてすべて保管しているんですよ。職業柄という面もあるんですが(笑)。
 
 
COCOmag___えぇ、お二人分、全てですか?
 
 
火神さん___保管といっても、スニーカーから紐靴まで色んな靴を箱にドサッと詰め込んでいるようなものですけど。ソールの減り具合とかを見返して、あらためて子供の足にとって良い靴はどんなものなのかを考えたりして。

そうそう、紐靴も子供たちが小さな頃から積極的に履かせていますけど、紐の結び方もきちんと教えてあげれば、小学校に入学する頃には自分できれいにリボン結びをして履けるようになるものなんですよ。
 
 
COCOmag___まさに靴の英才教育ですね(笑)
 
 
火神さん___そんなことはないのですが(笑)。

でも、そんなふうに靴を見るようになったのは、やっぱり自分に子供ができてからですね。ファッションの一部としてだけではなく、子供の成長や健康、子供がいる周りの環境も含めて、靴のことを考えられるようになったのは。子育てを通じて、子供たちから学ばせてもらったところはかなりあると思います。
 
 
COCOmag___親として思うことや感じたことを、NINOSの靴を通して表現しているのかもしれないですね、それって。
 
 
火神さん___う〜ん…確かにそういうところがあるのかもしれません。

NINOSの立ち上げ準備期間中、具体的な商品構成とかデザインを考えるのと同時に、自分はこのブランドを軸にどんなことをしていきたいのかということをすごく考えたんですよね。

その時に思ったのは、「NINOSの靴を通して、子供たちが豊かな心を育てることを手伝うことができないかな?」ということなんです。
 
 
COCOmag___と言うと?
 
 
火神さん___例えば…保育園を例に取っても、ヨーロッパだと遊び場がとても広かったり、建物自体も凝ったものや味があったりするものが多いのですが、日本ではそういう保育園はあまりないんですよね。

もちろん色んな制約があるでしょうし仕方がないところなのですが、日本で暮らしているとどうしても感性に対しての“縛り”というか、「これはこう」みたいな決まりごとに縛られているような気がするんです。

そして、それはひょっとしたら小さい頃は誰でも持っている感性が、いろんな制約やルールの下でどんどん失われた結果なんじゃないかと思うんですよね。
 
 
COCOmag___確かに、決まりごとやルールを重んじるのは日本人の美点ですけど、それにこだわりすぎると自由度が失われていきますよね。
 
 
火神さん___本当にそう思います。私が手がけているのは子供の革靴ですけど、それを含めたファッションや、それ以外にも子供の成長に伴うあらゆる場面で、子供たちの感性をそのまま育めて、自由な発想ができる場所があれば良いな…というのが、デザイナーとしても、親としても思うところですね。

NINOSとしては、子供たちが健康に育つのと同時に、「こんな子供の靴もあるんだ」という発見が子供の感性を刺激する、そして豊かな心を育てる、そんなきっかけになってくれれば良いのですが。
 
 
COCOmag___そうなると、靴や革の小物だけではなく、色んな発見や気づきを生み出すようなアイテムをどんどん生み出して、幅を広げていかないといけないですね(笑)。
 
 
火神さん___いえいえ、ブランドデビューからまだ1年と少ししか経っていませんし、今のところは靴や小物以外に幅を広げることは考えていないですよ(笑)。

でも将来的には、革で作るもの以外に幅を広げていけたら楽しいですよね。ひょっとしたら子供たちが楽しめる絵本かもしれないし、親子で一緒に過ごせる遊び場なのかもしれないし。
 
 
COCOmag___NINOSの靴に込められている思いが、もっともっと広く伝われば、そんな展開も見えてくるかもしれないですよね。
 
 
火神さん___そうですね、正直安いものではないですし、アイテムの性質上、爆発的に売れるものでもないですから、ブランドと商品を理解していただけるショップさんで、理解していただけるお客様に伝わればいいなと思っていましたけど、最近になってそれが徐々に伝わるようになってきたように感じています。

ライバルになる子供のシューズブランドが無いわけではないですけど、互いに協力しながら日本の子供靴のマーケットを広げていけたら良いなと思いますし、その時に子供たちやママ・パパに良い影響を与えられるブランド、選んでもらえるブランドになれたら…と思いますね。

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(取材・文/COCOmag編集部・柳原)

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