
デンマーク発のキッズブランド・katvig(キャトヴィ)。
2003年、ともにママだったKatrine(キャトリーヌ)さんとVigga(ヴィガ)さんが
二人で始めたこのブランド(…だから、二人の名前をミックスしてkatvig、なんです)は、
少しレトロなニュアンスの色使いや大胆な柄、そして環境と子どもたちのことを考えた素材などで
デビューから間もなくヨーロッパ各地で話題となりました。
そして日本では、もうすっかり人気キッズブランドのひとつに。
そのデザイナー・Vigga Svensson(ヴィガ・スヴェンソン)さんが、昨年12月に来日。
彼女がどんなことを考えながらキャトヴィのデザインをしているのか、
そして、子どもたちの未来のためにどんなことをしようとしているのか。
そんなインタビューを全編・後編の2回に分けて紹介します。
ココマグ__ようこそ日本へ! お会いするのは1年半ぶりですね。あらためて、日本の印象は?
デンマークの人たちは、日本をどんなふうに思っているのでしょうか?
ヴィガ___今回の来日のことを周りに言うと、とてもうらやましがられたわ!
デンマークの人たちにとって、日本は長い歴史と豊かな自然がある、遠くて美しい国。
でもその一方で東京のようなエキサイティングな都市もあって、
相反するものが1つの国でぶつかり合っているとても面白い国という印象ね。
そして、個人的には日本に来るといつも子どもの写真をたくさん撮ってしまうの。
日本の子ども服は本当に遊び心に溢れていて、カラフルで、
そして重ね着しやすくて魅力的だと思うわ。
ココマグ__なるほど、良いふうに思ってもらっているみたいでちょっと安心しました(笑)。
でも、そんな遠い国でキャトヴィの人気が高いのは、不思議な気分ではないですか?
ヴィガ___確かに、日本はデンマークから遠いし、全く違う文化を持っている国だと思うわ。
でも、その反面ですごく共通点もあると思うの。
例えば、余計な飾りを減らして美しいものを作る感覚はどちらにもあるものだわ。
家具や器などデンマーク製のものが日本で人気なのは、そのせいかもしれないわね。
それに、どちらの国にも、長い歴史の中で培われてきた独自の文化があるわね。
あとは四季折々の風習があるところ、豊かな自然に由来する色の名前があるところも。
そうそう、ユーモアのセンスもデンマークと日本は似ているかもしれないわ。
何かを見て笑うポイントが、とても似ているもの(笑)。
ココマグ__確かに、日本での北欧ブームもどこかノスタルジーや、
親近感を込めているところがありますものね。何だか納得です。
では、あらためて聞きたいのですが、キャトヴィを始めたきっかけは?
ヴィガ___キャトヴィを始める前は、デンマークの国営テレビ局で働いていたのよ。
番組の司会をしたり、ヒット曲を紹介したり、声優をしたり…
そして30歳になった頃、ちょうど二人目の子どもが生まれたタイミングで
「何か違うことをしないといけない」と少しずつ感じるようになっていたの。
その頃は、自分の子どもたちの服を買いに行っても満足できるものが少なくて、
こんなコンサバティブなものじゃない、見ていて勇気や元気が湧き出てくるような
子ども服はないの? という気分でもあったのね。
それで友人のキャトリーヌと共同で子ども服ブランドを始めよう!
ということになったのがキャトヴィのスタートだったわ。
ココマグ__「着せたい子ども服がない!」というきっかけは、万国共通ですね。
日本にもそんな気持ちでスタートした子ども服ブランドがたくさんあるんですよ。
私はそんなブランドの子ども服をいつも見ているのですが、
子ども服ってすぐに汚れて何回も洗濯したり、穴があいたり破れたりして
交換しないといけない“実用品”という意味合いが大人に比べて大きいと思うんです。
でも、それと同時に大人のファッション以上に、
想像力を膨らませた “夢の世界”を見せてくれるものでもあると思うのですが…。

ヴィガ___そうね、大人のはこの場面ではこの服
を着ないといけない…というような、
TPOやファッションのルールがあるけ
れど、子どもの場合はそんなに決まり
事って多くないわよね?
それに、子どもは大人が思っている以
上に自分のことを分かっているから、
自分が好きな服を、好きなときに選ん
で着ているいるはずよ。
だからルールに縛られないし、遊び心
をより前面に出すことができるの。
そして、キャトヴィはそんな遊び心と同時に機能的であることにも気を配っているの。
例えばトートバックにもなるタンクトップ(写真上)のように、ひとつのアイテムが
ふたつの機能を持っているデザインのアイテムとか。
そんなユニークな機能性を持たせら れるのも子ども服の面白いところだし、
これからはそんなアイテムにも力を入れて行こうと思っているの。
ココマグ__なるほど。では、ひと目でキャトィだと分かる、
あの個性的な配色を考えるときに大切にしていることは何ですか?

ヴィガ___色の組み合わせを考えるときに考える
のは、色がくすんだり沈んでしまわな
いようにすること、組み合わせた色そ
れぞれがイキイキと映えるようにする
こと、そしてダイレクトに子どもたち
の目や心に届くような組み合わせにす
るということ。
私は色には“言葉”があると思っている
の。力強い色やはっきりとした色は、
色そのものが様々なことを語りかけて
くれるから、子どもたちの心にもいろ
んな影響を与えてくれるはずよ。
だから、毎シーズン新しく作るストライプの色の組み合わせは、
必ず皆が驚くようなものにしているわ(笑)。
ブランドを始めた頃はさすがに反響も小さかったけれど、
徐々にこの色合わせが支持されるようになったの。
ココマグ__そんなキャトヴィの色合わせは、日本人にとっても毎シーズンすごく新鮮です。
でも、それはどこかで見たことがあるような気になることもあるんです。
例えば、着物の色合わせや手ぬぐいの絵柄のように、
現代の生活ではなかなか使わないけれど、日本人ならどこかで見たことのある色合わせ。
そんな日本古来の色合わせとの共通性を感じることがあるのですが…。
ヴィガ___デンマークでは、キャトヴィの色の組み合わせは実は少しノスタルジックなものなの。
‘70年代にカラフルなものが流行った時期があって、その頃に子どもだった世代が
親になり、キャトヴィに新鮮さと懐かしさを感じるという側面はあるわ。
でも、遠く離れた日本で懐かしさや親近感を感じてもらえるのは、ある意味面白いわね。
ココマグ__先ほどの話のように、デンマークと日本は離れているけれど、
ある意味とても近い国どうしなのかもしれないですね。
どちらの国にも自然の生き物や風景に由来する色の名前があるように、
色が持つバックグラウンドも似ているから、色の組み合わせに対しても
同じように良い印象を持つのかもしれないと思います。
2010年春夏シーズンの色合わせも、今までのキャトヴィらしさを感じるのと同時に、
今まで以上に鮮やかな色合わせがとても印象的でした。
ヴィガ___ありがとう。でもこれといって戦略があってのことでは無いのよ(笑)。
しいて言えば、その時々に私が感じていることに影響されているのかもしれないわね。
だから、次の秋冬シーズンはもっとシックな色、丸みを帯びた色になるかもしれないわ。
ココマグ__そんな自由な雰囲気も、人気の秘密かもしれないですね(笑)。
ところで、日本では正確な数が分からなくなるくらい
インポートのキッズブランドは増えました。
日本だけではなく、約20カ国で取り扱われているキャトヴィとして、
ほかのキッズブランドとの差別化はどのようにしていくつもりですか?
ヴィガ___悩ましい問題ね(笑)。
対策のひとつは、模様や柄ね。ボーダー、ストライプ、総柄プリント…
どんなアイテムでもキャトヴィのものだと分かってもらえるような、
個性的な色合わせや柄をこれからも考えていくことだわ。
そしてふたつめは「サステイナブル」という考え方をもっと追求して、
みんなに知らせていくことが大事だと考えているの…………(続く)
…とてもフランクで、そしてこちらの質問に丁寧に答えてくれるヴィガさん。
キャトヴィのアイテムが持つ、明るくて、元気で、クリーンなイメージは、
ヴィガさんの人柄そのものなのかもしれません。
ヴィガさんのインタビュー・前半はここまで。
後半はキャトヴィが考える環境のことや未来のこと。
キーワードは「サステイナブル」。
専門的なことや難しいことは、そんなに分からなくてもいいんです。できることから始めるのが大事。
それが、私たち大人が子どもたちのためにしてあげられる最善のことなのかもしれません。
というわけで、ヴィガさんのインタビュー・pt.2に続く...
